2026 九頭龍川釣行記(その2)
冨安 隆徳
愛知県豊川市在住。ルアーで四季折々の魚を求め釣り歩く、アウトドアが大好きなサラリーマン。主なターゲットは、九頭龍川の桜鱒、天竜川水系遠山川のアマゴ・イワナ等。
【短かった春】
4月も中旬を過ぎ上流部の山々の残雪はほぼ見られなくなった。農地を耕すトラクターの姿が日常の風景となり、田植えが迫っていることを知らせてくれていた。
寒風の中で凍える手を摩りながらキャストし続けていた頃がもはや懐かしく、鮮やかだった五松橋の桜並木も、随分前の出来事のように感じられた。待ち遠しかった春は年々短くなり、桜が散ると一足飛びに初夏へと向かってしまうようだ。
【今季一番のチャンス】
日差しに初夏を感じると水位のことが気になってくる。今季は少ない積雪に記録的な少雨が重なり、雪代に悩まされることなく順調にここまで来たように感じている。しかし4月は遡上を促す長雨も期待したほどではなく、囁かれていた渇水が現実のものになろうとしている。そこで今季は減水が始まる4月下旬までに釣行スケジュールを集中させることにした。すると今季一番の増水後に釣り場に入ることができのだが・・・・・。
【期待の増水は?】
釣行の前日に福井市内に大量の雨が降った。このタイミングを待っていたかのように九頭龍川には多くの釣り人が押し寄せた。しかし初日は水位と濁りに悩まされ、思うような釣りができなかったようだ。下流部で夕方に若干の釣果があったようだが、私は流れを確認して早々に釣りを断念した。
翌日は日曜日。早朝から釣り場は込み合った。高めの水位に若干の濁りが残る状況のなかで多くの釣り人がこの流れに挑んだが、この日もハイシーズンとは思えぬ貧果で終わることとなったようだ。早朝に水位と濁りを確認した私は、いつも通りゆっくり朝食を楽しんだ後に終日釣り場に立った。しかし他の釣り人同様、これといった反応も得られぬまま2日目を過ごすこととなった。
プレッシャー 濁り 水位 それとも遡上数が少ないのか?
決して釣れない状況ではなかったのに。水位はこの増水が収束すると連休に向かって確実に下がり続けるだろう。何か打つ手はないのだろうかと少し考え込んでしまった。
【早朝に川原に立つこと】
日の出とともに釣り場に立つのは何年ぶりだろう?
昨夜思いを巡らせ出した結論が、早朝から釣り場に入ることだった。4月であればサクラマスは日中でも口を使う。早起きが苦手な私は、フィッシングプレッシャ―を言い訳に、早朝の込み合う時間に釣り場に立つことはほぼなかった。しかし今後いい状況で釣りができるスケジュールは限られていることから、覚悟を決めて早起きをすることにした。
魚との距離を縮めるには ①最良のポイント ②最高のタイミング 川に立つことだとシンプルに考え、イルフロッソ83(TILF-83TR)とチェリーブラッドを手に、静まり返る川原で日の出を待った。幸い私の好きな水位まで徐々に下がり続け、幾分濁りも取れたように感じられた。
そして6時 「トロ瀬」から釣りを始めた。
【変化に富んだ流れ】
このポイントは2つの流れが対岸のテトラの前で合流し、落差のある「早瀬」「深瀬」「トロ瀬」「開き」に続く流程の長い釣り場。昨年は高めの水位で激流となっていたため、私の釣り場ではないと判断していた。しかし今季改めて確認すると、地形に少しメリハリが感じられ水位が下がれば釣りは可能であると考えを改めた。
特に下流に長い瀬が続く「開き」は、早朝やプレッシャーが下がったタイミングで遡上途上の魚が足を止める可能性があった。そこで今季は何度もこの流れに通い、実釣を通じて攻め処を確認してきた。その中で右岸に流れる筋の岸際の「かけあがり」に「水深のあるスリット」が続いていることに気が付いた。岸に近く浅いため、先行者が不用意に水際に立つだけで魚に警戒心を与えてしまう。誰も攻めていない早朝に、遠くからじっくり攻めてみたかったのだ。
【トロ瀬 開きは異常なし】
この「開き」を攻め切ることを目的に、まずは「トロ瀬」から釣りを始めた。増水後数日が経過し、ようやくいつもの透明度を取り戻していた。キャストの度に喰ってくるのでは?とドキドキしながらルアーを流すのも久しぶりだった。
ルアーはチェリーブラッド 90MDヤマメ。水量も落ち着き、穏やかになったこの流れにはフローティングが丁度いい。早朝は魚が岸に寄っていることが考えられる。むやみに川に立ちこむことなく、川原から静かにキャストしながら釣り下っていく。狙いは岸際のかけあがりに着くサクラマス。ナチュラルドリフトで広範囲に流れを刻みながら、変化のあるところでは誘いを入れていく。しっかり下流に流し込み、最後は岸際のかけあがりをダウンで引き、反応がなければ釣り下がっていった。流し終えたところで誘いを入れたりステイさせるなど、流し方にも変化を加えて喰わせの間を与え、丁寧に地形変化を探っていく。
「トロ瀬」を釣り下ると日差しも強くなってきた。いよいよ誰も攻めていない「開き」にルアーを流し込もうとした時だった。下流から釣り場に入ろうとする人影が見えた。恐らく下流の瀬に車を止め、この開きに入るつもりだったのだろう。狙いの岸際のスリットが潰されてしまうのではと肝を冷やしたが、幸い私に気付いたようで、岸際を歩くことなく藪こぎしながらこちらに近づいてきた。手短に挨拶を交わした後で
「上流に入っていいですか?」
と聞いてきた。
「どうぞ。」
ここから彼と一緒に「開き」を釣り下ることになった。
【答え合わせ】
時刻は7時。期待の「開き」から釣りを再開した。早瀬の倍の川幅だが高低差が無いため流れは穏やかで水深は1m程。下流にはかつての合流点の名残が見られ、ここから右岸に流速を増しながら流れ落ちている。岸際のかけあがりは僅かに残る中州の前のスリットまで続き、この辺りが少し深くなっている。全体の水深を考えればチェリーブラッドSR90でもいいのかもしれない。しかし狙いはあくまで岸際のかけあがりと水深のあるスリットだ。ここに潜むであろうターゲットにしっかりルアーを送り込むため、そのままMD90ヤマメを流し続けた。
少し早くなり始めた流れに乗せて流れの筋を横切らせ、スリットと岸際のかけあがりの深みに向けてルアーを流し込んでいく。リップに流れを受けてアクションを続けるMD90の振動を感じながら、まずはそのままステイさせて喰わせの間を与えた。するとその瞬間ルアーが引き込まれ、大きく首を振るようなサクラマス特有の当たりをイルフロッソのティップが捉えた。
「喰った! やはり居た!」
魚はそこでローリングを始め、その動きの一部始終を感度のいいティップは明確に手元まで伝えてくれた。仮説の答え合わせをこのサクラマスにして貰うと、狙って掛けた歓びを感じながら至福の時を楽しんだ。上流の彼も私の動きから魚を掛けたことに気づいたようで、こちらに視線を送ってくる。喰った瞬間にドラグが僅かに引き出されたが、その後ラインが出ていくことはなかった。あまり大きな魚ではないようだ。そのため激しく暴れることなく、かけあがりに沿って足元まですんなり寄ってきた。まずは掛かり処と魚体の確認を行った。一瞬姿を見せたサクラマスの口には、いつものようにMD90ヤマメがしっかり掛かり、今回もフッキングも完璧だ。大きは50cm程だろうか?しばらくすると水面に浮き始めたので、チェリーネットのロックを外し静かに浮かせて一気にランディングに持ち込んだ。
早起きもたまにはいいものだ。
この魚は今朝の努力に対するこの川からのご褒美のような気がした。
掛けてからランディングまでの一部始終を見ていた彼は
「おめでとうございます。 早朝からいいものを見せてもらいました。」
と祝福してくれた。
他人の魚でも心から祝福できる不思議な魚 サクラマス。手にするまでの努力と苦労がお互いに解るからこそ、このような行動になるのだろう。またもこの魚の不思議な魅力に触れることとなった。
【これから】
2026年のハイシーズンが終わろうとしている。これからいよいよ九頭龍川は初夏の釣りに移行していくことになる。水位低下と代掻きによる濁りが加わり一時的に釣果は下がるが、濁流で釣りができない程ではないだろう。サクラマスも濁りに慣れてくると感じており、再び反応するようになるので不思議である。
5月に入り水位が下がり水温が上昇してくると、いよいよフライが最盛期を迎える。多くのフライマンがこの時を待っており、限られた流れのあるポイントは彼らとシェアすることが多くなる。お互いに適度な距離を保ち、気持ちよく釣りを楽しみたいものだ。
ポイントも流れのある上流部に求めがちになるが、魚は河口部から遡上してくることを忘れてはならない。この時期思わぬフレッシュな群れが遡上し、下流部でいい釣りができることもある。上込み合う上流部を避け、下流部に釣り場を求めるのも攻略法の一つではないだろうか?
大切なことは諦めることなくキャストし続けることで、すべてはそこから始まるのだから。
この言葉は私自身にも言い聞かせることにしよう!(笑)
Rodスミス イルフロッソ TILF-83TR
Reelシマノ ステラ 4000
Lureスミス チェリーブラッド MD90(ヤマメ) MD90S DEEP90 SR90T2 SR90 SR90SS
MD82 MD82S D-コンタクト 85 DDパニッシュ 95F 80S バッハスペシャル18g ベイティス17・22g ピュア18g B&F RIPPER 13g 16g
Lineヨツアミ PE X-braid X-8 1.0号
Leaderバリバス ナイロン 20LB
Snapスミス クロスロックスナップ♯2
Netスミス チェリーネット サクラ
2026 九頭龍川釣行記(その2)(冨安隆徳氏)
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